大川興業株式会社 代表取締役でタレントの、大川 豊さんが、おやじについて語っていた記事。(朝日新聞)
“ 謎のおやじですね。 どこに住んでたのか。 なにをしていたのか。 全然わからない。
一緒に住んでなかったんですが、突然、家にいたりする。 小さい頃、一応母親に「なんでうちはおやじがいないんだ」って聞いたんですよ。 そしたら答えが「お前がおやじになれ」。
意味わかんない。
「男のくせにつまんないこと言うな」ってことでした。 木とか山とか、森羅万象をおやじだってことにしろと。
なので、そうしてました。 多神教の神みたいなもんです。
山も木もおやじだし、あの人もおやじ。
今の親子関係って「この人しかいない」っていう一神教だから苦しいんでしょうね。
母親は米軍基地で働いてました。 経済成長の時代に「これから日本は官僚の国になって前例踏襲しかできなくなる」って見抜くような賢い人。 母が父親代わりでもあったし、父がいなくて寂しいとか、全くなかった。
おやじとは、たまに会って「最近どう?」って話をする感じでした。 楽しそうな人でしたね。 六本木で上下白のスーツを着て女子大生を連れて歩いてたとか、ほんと謎でしたけど。 昔の日本は、そういう自由な存在がいたんでしょうね。
電車に乗らず、どこに行くにも歩き。 全部自分でやりたい人なんですよね。
07年に82歳のとき、ガンで死にましたが、その数日前、病院からおやじがいなくなったって電話があって、急いで行ったら、1階の売店でなぜかオロナミンCを飲んでた。
病室までの帰り、やっぱり自力で歩くんですよ。 途中カクンってヒザが抜けたりして、ヨロヨロで大変なんだけど、背中がつらそうじゃないんですよね。
哀れとかじゃなくて。 だから僕は手を貸さずに見てた。
「この人は自分で歩く方が楽しいだろうな」って思いました。 その背中を見せてくれただけで、なんか親としては十分だなあ。
おやじはハゲてたんだけど、亡くなって病院から帰ってきたらフサフサでした。 かつらです。 笑っちゃう。
親友が「お前そんなにモテたいのか!」。
死んだ後も人を笑わせるおやじ、恐ろしいですよ。
僕にはできるかなあ。 ”
短い文章の中に、計り知れない含蓄を感じてしまいます。
繰り返し読むだけで、日本酒三合いけます。(飲みませんが・・笑)
みなさんはぜひ一杯やりながらどうぞ。