前衛芸術家、草間彌生さんの記事が出ていた。
子どものころから視界に水玉が浮かぶ幻覚幻聴に苦しみ、注目を集め始めてからも精神的には大変で、いつも自殺に憧れていたという。
現在も入院している病室から、毎朝スタジオに通う日々を送る。
スタジオでは展覧会をやりたいといった問い合わせや来客でひっきりなしの中で、食事を忘れるほど集中して9時間ほど描き続けるという。
動機は、芸術の高みを目指す純粋さと同時に、心の病を克服するためだという。
そんな彼女の作品はオークションで5億円以上の値がついたこともある。
近作展のタイトルは 「永遠の永遠」。 描き続けることで宇宙の一部になるという宇宙観も潜んでいるという彼女はこう続ける。
宇宙は、私が死んだ後も果てしなくくり返します。 私は、(水玉の衣装で水玉の空間に立つなど)自己消滅を試みたり、無に憧れたりしてきたが、宇宙も限界がなく、同じような状態だと思う。 永遠の永遠です。 今大切なのは、無や宇宙に対する人生観を立ち上げること、不老不死の人生観を立ち上げること。 その中に、平和や愛を入れます。 一番心がけることは、死を恐れないこと。
人気の高まりにつれ、多忙の極にある彼女ではあるが、病院に帰ってからも夜中の2時、3時まで描いているという。
ここまで描き続ける背景に、心の病の克服があるという。
芸術の力で、山をいくつもいくつも越えてきた。 子どもの頃は、スミレの花を見ていたら、だんだん顔に見えてきて、怖くなって家に帰って押し入れに隠れた。 また水玉が自分の中に入ってくるような体験もありました。 それに私は絵を描いてないと、ものすごく孤独なの。 父も母も亡くなって、ひとりぼっちなの。 スタジオだって夜になれば誰もいなくなってしまうでしょ。
また昔は演劇を見に行ったり、遊びに行ったりしたけど、今はそんなことしてる余裕はない。 人生の終わりに近づき、熱烈に絵を描くための時間がほしい。 芸術で築き上げた世界に、この年になって自信が出てきた。 今までのことを土台に、これから本気になって、絵描き、芸術家として立っていくときなんです。 これからが本当の草間彌生の人生なんです。 そして私が死んだ後も、作品に少しでも感動してくれる人がいれば、芸術家として非常に満足です。 でもやっぱり、もっと描きたいという感じね。 永遠に描きたいという気持ちです。
一番新しい、誰も作ったことのないもののために、十代から一生懸命描いてきた。 新しい道を見つけてきたんです。
この83歳の前衛芸術家を前にすれば、普段やってはいけないこととして自他共に言い聞かせてきた 「自分と他人とを比べちゃだめよ」 という言葉が急速に色あせて、自分の存在が危うくなりそうである。
あぁ、 なんというわが身の、 わが人生の軽いこと。
もちろん命まで軽いとは言わないが、 隙だらけのこの人生は、 本当にこれでいいんでしょうか?
草間さんに尋ねてみたい気持ちが半分、 「その時点でアウトじゃ、アホ」 が半分。
あぁ、凄いぜ、 草間のお婆 。