はーと・ねっと・くらぶ設立2年目、すなわち2002年の春、あいあいキャンプのボランティア募集説明会に来てくれた愛媛大学理学部の男子学生がいた。
設立2年目のはーと・ねっと・くらぶは、それはそれは未熟なものでした。 もちろんそれは創立者である私が未熟であるからなのですが、ただスキルの未熟さ、考え方の未熟さとは裏腹に、情熱(パッション)だけは人の10倍くらいはあったように思います。 そんな風にアンバランスなものですから、それはそれは周りの方々にご迷惑をおかけしておりました。
ただ、ボランティアの学生諸君は、基本的なスキルは昨今よりもはるかにまともなものがございましたので、キャンパーに対する接し方等も、かなり自由にお任せしていました。 そのおかげもあり、個性的なやり取りや環境はたくさん生まれたのですが、同時に周りに対する気遣いの未熟さは研修もままならず、やはり周りの方々にはご迷惑をおかけしていたと思います。
良くも悪くも、原始的な野性味あふれるキャンプ活動であったというわけでございます。 (当時の皆々様、お許しくださいませ。。)
彼は、そんな野生味のあるあいあいキャンプの中で、ペットボトルを大量に集めて、キャンパーと一緒に人が乗れるいかだをこしらえて、キャンプ場の前を流れる川に浮かべて乗って遊んだりというプランを実行してしまう、そんな学生だったのです。 理知的でありながら大胆さも併せ持つ、まじめで陽気なボランティアスタッフというところでしょうか。
その後彼は、2年間あいキャン活動を体験し、学校の卒業と同時に県外の農業法人に就職し、数年後、いつか自分で起業するために(株)リクルートに再就職し、各種マネジメントを身につけ、そして現在別の農業法人にて働いています。
その間にあいキャン同期のスタッフと結婚もし、子供も授かりという具合に、何かと私に連絡をくれている、ご縁のある彼でもあるのです。
そんな彼からメールが届きましたた。
『 田中さん
ご無沙汰しています。
タンコロです。時々、あいきゃんのHPを拝見させて頂いて、「自分への頑張り」をもらっています☆
本日はご報告があり、メールをさせて頂いております。
大学在学中での貴重な経験を頂き、早いもので10年。
昨年ようやく自分なりの「あいキャン」を実行できるようになりました。
まだまだ拙い段階ではありますが…
昨年初めて自分で企画した都会の子供たちとの「体験合宿」を企画運営し、合計30名の子供たちに参加をしてもらうことができ、貴重な体験をすることができました。
そして今年は、被災した福島と宮城の子供達20名と山口県の子供20名、合計40名の子供たちとプレ・本番・アフターキャンプを行うことができそうです。(ワクワク♪)
このような企画をする度に、「あいキャン」を思い出します。
きっと私にとって「原点」
そんな貴重な体験をさせて頂いたこと、
今更ながら感謝をしております。
自分がこのようなキャンプ企画運営をすることになって初めて、田中さんの大変さ偉大さを痛感しております。
その当時の私は、何気なく参加をさせてもらっていましたがきっと裏には、様々なご苦労があったのだろう…と感じております。苦笑
田中さん
覚えていらっしゃいますか?
いつかお酒を飲みながらお約束した
「自分なりのあい・あい・キャンプを実行します!」
と言ったことを。
今年は山口県内合計2箇所で「あいキャン」計画進行中です。
昨年の体験合宿とさらに、(昨年の実績が認められ)被災した子供たちと一緒に「あいキャン」が”畑のど真ん中”でできそうです♪
夏に向け、いまからさらに頑張っていこうと思っております。
影ながら、はーと・ねっと・くらぶを応援させて頂いております。
今後益々このような「すばらしい機会」を子供たち、
高校生、大学生…等、関わるすべての・多くの人に伝えていけることを願っております。
最後になりましたが、田中さんはもうお年です
お体ご自愛ください(笑)
以上 タンコロ 』
このメールを読み終わった時の、私の衝撃的な喜びをご理解していただけるでしょうか?
10年前にあいキャンを卒業したスタッフの一人が、 あいキャンに対する思いを忘れるどころか、その思いを今度は今の自分のいる世界で形にし、またそこでかかわるたくさんの人たちと共に共有したい、 そのすばらしい機会を体験を通して伝えていきたいというのです。
これは本当に事件でした。
そりゃあ私だって並みの人間ですから、数十年後には、一緒にあいキャンで体験を共にした仲間のうちから一人くらいはこんな活動を始めるやつが出てくるかもなぁ・・・ なんて、少しは思ったりもしましたよ。 それは。
それがなんと、私の目がまだ黒いうちに、この10年のうちにこんなことを実現してしまうやつが現れるとは・・
びっくりしました。
しかもこの3月であいあいキャンプは活動を終了していたわけですので、その生まれ変わりのタイミングで始まろうとしているのですから・・
私はつくづく幸せ者だと思います。
共に過ごした若者たちがどんどん成長しています。
常々私は彼らに対して、「私は決して君たちに期待はしない」と言い続けてきました。
それは一見冷たい言葉のようにとれるかもしれませんが、そういう意味合いではなく、人が人に期待をするということは、その人に自分の思い通りの人になってもらいたいという、エゴの押しつけを感じるからこそ、期待しないという意味なのです。
そうふるまうことで、若い彼らが自分らしく最後まで考え、行動することができるのだと思えばこそなのです。
もっと言えば、 信じているからなのです。
もっとも、チャレンジのレベルを自ら引き上げることをサボってる人には、どんどん壁を引き上げるお手伝いをさせていただきますけどね・・
ギリギリそんなバランスを意識しながらの12年間でございましたが、 彼からのメールを読んで、こんなにうれしくなってしまったという事実からは、 やっぱり期待していたのか~ ということなのかもしれませんね~ 。
未熟な私です。。
私が30数年前の学生時代に体験した、あるボランティア活動。 そしてその時に生まれた熱い思いを、心の中に種火として灯し続けて20年後の41歳の時に立ち上げた、あいあいキャンプ。
そして、そのあいキャンを体験し、新たな種火を心に灯した人間が、10年後に山口県の農村に立ち上げるあいあいキャンプ。
喜びと感謝しか生まれてきません。
「田中さんはもうお年です」 という以外は・・・ (笑)
この夏、ひょっこりかの地の「あいキャン」を覗きに行ってみようと思います。
もう一つの、 春の芽吹きです。