5月6日、 連休最終日
お亀岩避難小屋にて、一夜の友と一緒に目覚め、野生のシカを見、朝日を見、食事をし、尽きぬ話に後ろ髪引かれながらも、7:00過ぎには一緒に小屋を後にするのでありました。
さあ、私はこの日だけはタイトに行動しなければいけません。
それはこの山行の出発地点である「見ノ越駐車場」まで帰らなければならないわけですが、そこに行くバスは1日2便だけであります。 それを逃すと最悪また半日くらい歩くのでは・・ という世界です。
久保バス停、10:00と13:18発の2本勝負ですが、今日の予定をすべてこなすと、私の足なら恐らく5-6時間はかかるだろうという、誠にスリリングな行程でありました。
この日の予定は小屋を出発し、目の前の山を登り、天狗峠を越えて、その向こうにある天狗塚に登り、それからまた引き返し、天狗峠よりひたすら下り、西山林道登山口に出て、そこからは車も走る林道をひたすら国道までまた下り続けるというものでした。
上から下まで標高差1000mほどを一気に下りていくわけですので、膝の負担もまあまああるかなー、 というところです。
疲れの溜まった身体をいたわりながらも、相変わらずすばらしい景色を楽しみながら登った天狗峠から見えた天狗塚は、うーん、また登りかー・・・ でしたが、当初の計画通り、どうしても行きたいところでしたので、時間節約と体力温存を兼ねて、ここでもザックは「デポ」です。 まあ取っていく人もこの時間なら居ないだろうという読みですが、賭けでもありますねー。
(振り返れば歩いてきたすべての行程が・・・)
(天狗峠)
して、またまた快適になった私は予定時間内に登頂。
そしてここも想像以上に素晴しい場所であったのでした。
360度に広がる世界の中から、かみしめる様に味わう風景。
朝日らしさの残る陽光をあびた山々と空は、少なくとも私にとって神々しさに溢れていました。
あまりに眺望が素晴らしいのでその場でクルクルと回り始めた私は、軽いトランス状態に陥ったかの如く回り続けます。
ある言葉を口ずさみながら・・
そしてこう思うのでありました。
「あぁ、こうするために今回来たのかなあ・・ 来させてもらったのかなあ・・」
そこは本当にあらゆる大地が見下ろせる感覚でした。
どこまでもつながる大地。
ありがたい限りです。 ありがとうございます。
さあ、 これで予定したすべての山に登らせて頂きました。
帰りましょう。
淡々と下り続けます。 中々に足場の悪い登山道を慎重に下りながらも、静かな気持ちが続いています。
山の中で数日暮らしてみることが、今回の目的でもありましたので、このゆっくりとした行程が必要であったともいえます。
この山行を通して、自分に合った楽しみ方を感じることができたような気がします。
そんな気づきが、余計に心を静かにしていたのかも知れません。
だんだんと集落が見え隠れしてきます。 林道も見えてきます。
そして、 登山道口の階段を下りた時に、 私の登山は終了したのでありました。
もっとも、ここからバス停までの数時間の歩きは残っていますが・・
ということで、気を取り直して舗装された林道を歩き始めます。
一見つまらなさそうな林道歩きですが、私にとってはこれも文句はありません。
なぜなら、稜線上とは別世界の自然に溢れているからです。
まさにこのあたりの高度まで下ると、新緑の溢れる空間なのです。 今までなかった広葉樹林帯の中を、沢のせせらぎと小鳥たちの歌声を聴きながら歩ける幸せに満ちています。 こうやって楽しみながら下って行こう。 そう思いながら10分も下ったでしょうか。
と、その時。
一台の車が止まります。
「乗っていきますかー?」
ちょうど同じように登山を終了した方が、登山口に止めておいた自家用車で帰る途中に、「ここから下まで歩くとかれこれかかるなあ」と分かっているので、親切心で声掛けしてくれたのでした。
正直に申しますと、そういう親切な方もいらっしゃるかもね・・ とは思っていましたが、期待する性分ではありませんので、封印しておりました。
が、
現れました。。 こんなにも早く。。
「ありがとうございます。 いいんですか~。 よろしくお願いしま~す」
お返事も早かったです。 はい。(笑)
こんな私です。。
国道までの数十分間、楽しくおしゃべりしながら山の話をさせていただき、「またどこかでねー」とお別れしました。
ステキな四国中央市のおばさまでした。 ありがとうございました。 またどこかで・・
車の力はすごいです。 バスの時間まで1時間半以上あります。 浮きました。 貴重な時間が・・・
ああ、朝からの山行で腹がへったー。 だってもう昼前ですもん。
しかし周りは・・ 久保のバス停、 それ以外に家が数件。 他は山と木々と川。
バス停のとなりの家に聞き込みに入りますと、 カップめんが・・
生活雑貨店も兼ねたその店で、あるカップめんを仕入れます。 この時には私の食料は完全に終了していたのです。
これでバスの時間までに腹ごしらえ出来る。 さてどこで食すか?
瀬の音が聞こえます。 そこだと思い、河原への降り口を探だし、下りていきます。
みごとな場所です。
十分以上のリゾートです。 ありがたやありがたや。
ザックからストーブを出し、火をおこし、湯を沸かします。 後はカップめんに注いで待てばよい。
ふたを開け、粉末ソースをめんにふりかけ準備万端。 もう何も考えることなく、あっという間に湯を注ぎ、ふたを閉めてー、3分間。
あぁ~、いい旅だったな~。 と思い起こしたその時。 歴史は動かないけど、心が気づいた!
「ちょっと待てよー!」 「俺が買ったの、カップ焼きそばだったよなー」 「オレ、粉末ソース、もう振りかけたよなー」 「焼きそばって、湯を捨ててから、ソースかけるんじゃ・・・」
「おぉ~~~ 。」 「なんてことしちまったんだよ~」 「どうすんだよ~」 「あぁ、もったいね~」 ・・・でした。
普段やらないことを、疲れた時にやるとどうなるか、 「バッカじゃないの~」 というかみさんの声が聞こえた気がしました・・・ (このことは言えねえ)
少し正気になった私は考えます。
「そうだ、これはラーメンだ、湯をすてる必要はなく、このままかき混ぜて食えばいいんだ」 「これはソースラーメンという物なのだ!」
そこまで腹が減っていたということなのでしょう。 ということにしましょう。
食えたのですから・・・ それなりに・・
テキパキと撤収も完了した後、 大きな石の上に寝転がって新緑と渓谷の音を楽しみます。
一点だけ、このまま寝てしまわないことだけ注意をしながら・・・
休養としては最高級の休養でした。 娑婆に帰る前の調整ができました。
予定通りに13:18に来たバスに乗り込み、 近辺の集落に暮らすお客のおばあちゃんとかれこれいろんな話に盛り上がりながら、運転手のおいちゃんともかれこれお話しながら、約40分間の高級観光を堪能させて頂きながら、 バスは私の車のある場所に到着したのでありました。
あぁ、 すばらしき自然であり、環境であり、人々であり、山々でした。
それは私だけが感じていることではなく、 ここで出会った、たくさんの県外からの山の達人たちが、口々に言っていた 「四国の山はいいですよー」 「全然いいです」 という言葉でもお伝えできるのではないかと思います。
年に一度の縦走ですが、 まだ2回目の縦走ですが、 すばらしき日々を与えてくださいました諸々の存在に対し、 心より御礼申し上げる所存でございます。
お世話になりました。
ありがとうございました。
これからも、感謝を胸に湛えながら生きていこうと思います。
~おまけ~
山行中拾い集めたゴミ ・・ わざと捨てたわけではないと思いますが、目につく範囲はみんなで拾っていきたいものですね。