青葉土地コーポレーション 青葉土地コーポレーション
ブログ
弁当の日から見えてくる世界
2011年8月1日 | 食のシリーズ

先週土曜日に国立大洲青年の家にて(社)大洲青年会議所主催の講演会がありました。 以前より新聞等で拝見し、是非直接聞いてみたいと思っていた竹下和男さんという教育者です。 彼は「お弁当の日」を世に出した人であり、現在その効用について全国を飛び回りながら啓発啓蒙運動に尽力されています。

この「お弁当の日」というのは小学5年生と6年生が月に1回自分で自分のお弁当をこしらえて学校に行くという日、ということになります。 これだけですと「なんやそれ」で終わりますが、それがとてつもなく深いから面白いのです。 当初保護者にこの提案をしたら一斉にブーイングの嵐だったそうです。 「なんでこの忙しいのに子供の弁当作らないかんのー」「子供の弁当なんか作りたくもない」・・・  という声声声だったそうです。 うそー、と思われるでしょうが本当です。正直そんなものだと思います。この十年二十年の世界はそんな世界でしょう。 ところが「お母さんは何も手伝わないでください」というと、ブーイングはとたんに笑顔に変わるようです。 「子供だけで作ってもらうように」というとニコーとするようです。 本当に作りたくないのですね。

一回目の弁当の日、子供たちは学校に来るなり弁当のふたを開けて見せあいを始めたそうです。 しかし本当のところは母親に手伝ってもらった子供が大半でした。 しかし、その中に少数だけれど自分でやる子もいたわけで、自然に子供たちは意識を始め、次は自分でやろうと決意し、母親と一緒にスーパーに買い物に行き、次々に質問し、キャベツとレタスの違いがわからなかった子供が学校で「お前知っとるけー」と自慢するようになる。 それを聞いた子供は次々と刺激され学んでいく。 今度は一人で全部買い物をしたという子が現れると「ピクッ」と反応し、やられたと思い次回挑戦する。 米とぎも米が流れてしまったことからザルを使うことを覚え、それがなければ指の間から水を流すことを知っていく。失敗は子供たちにとっては自慢話の種に変貌し大切なコミュニケーションの一部にさえなってしまうようです。 また、から揚げを作るのに自分用の2個だけ揚げる子はなく、どうせならと家族の分まで作る。 それを食べた家族から「おいしい」と言われ、喜びが帰ってくる。 ますます料理する「動機」が生まれ、またやろうという継続の精神が育つ。 そして一つのことに自信を得た子は様々なことへの挑戦を始めるようです。 そして二回目の弁当の日には自分だけで作る子が増えてきて、五回目くらいにはほとんどの子供が全部自分で作るようになっていたそうです。

さてここまで来ると見え隠れしてくるものが・・  そうです。 全部子供たちで作れるようになるには母親が教えてあげなければなりません。 子供が友達に刺激されてレベルアップを母親に要求するたびに、何を隠そう母親が勉強を始めるわけです。 あれほど子供のために作りたくないと言っていた母親も子供と一緒になって作ることを学んでいったというのです。 それまですべての料理はフライパンでいためるだけの食事しか作ったことのない母親も、魚料理を一度もしたことがなかった母親も、あらゆる料理が子供のおかげで作れるようになっていったというのです。 そして今ではそのことに感謝しているのです。 

この母親たちも実は自分の親から何も伝えてもらっていない世代だったのです。 家事なんぞ手伝う暇があったら勉強しろ、習い事をしろ、本でも読んでろ・・・

勉強して、いい学校に行って、いい会社に就職して、いい人と結婚して・・・

どこにも家事が入る隙間なんてなかったんです。 それがいいとほとんどの大人が思っていたのです。 だからそんな母親にならざるを得なかったのです。

しかし、親たちはこの「弁当の日」でどんどん変わっていくわが子を通して家事の大切さを学んでいきます。 そして自分を育てなおし始めます。

 竹下先生は提案します。 「親ができる料理を引き継ぎませんか? おばあちゃんが生きている間に引き継いでいる姿を子供に見せませんか? あんな大人になりたいと思ってもらえるような父親や母親になりませんか? そんな大人になりませんか? 責任のなすりつけ合いでなく、子育てが楽しくてしょうがない環境を作りましょう」 と。

 

 大筋でざっと説明するならこんな内容になろうか? しかしここまでに至る現実世界の背景を現役教師時代の経験をもとにデータとして示してくれるわけで、8-9割の大学生の食生活の実態調査など驚愕に値する内容だし、家庭での食生活も腰が抜ける内容です。 保育園に講演に行ってそこの子供とままごと遊びをした時、おにぎりを作るまねをし、お皿からとってすぐに食べるまねをすると、コンビニおにぎりの包みのはがし方がないと言って叱られた話などもそれしか食べさせてないという世界が完璧に存在することを垣間見せてくれます。 現場における行動を通してかつ専門家としてその事実に基づく中から見えてくる課題を検証し、ビジョンへと構築してくれるのでとても素直に心に染み入ります。 またその引き出しの多さ(情報量、体験値)に唖然としますが、どれも本当の話であることが逃げるわけにはいかないという覚悟を生みださせます。

 この弁当の日を体験した初期の子供たちは大学生になり、社会人になりました。

彼らは今でも自分で食材を買い出しに行き、選択し、調理しているそうです。 調理師専門学校の生徒の自炊率は4%だそうです。 弁当の日卒業生の自炊率は80%だそうです。

 一体調理師の卵たちは何をしに行っているのでしょう。 それ以外の若者は生きていけるのでしょうか? 

専門家は頭を抱えているそうです。 食のノウハウを教える以前の問題が一番の問題になってしまった・・・

 

私自身、あいあいキャンプを通して垣間見てきた子供と若者の食の世界に唖然としたことから昨年より食育というテーマを意識するようになり、今年も少しずつ学びの場を用意させていただいた。 でも、今回の竹下さんのお話を聞いてそんなレベルの世界ではなくなっていることがよくわかりました。 本当は、本当に、家庭生活の中から、保護者から作る楽しみを身につけていかなければ伝える側には立てないということが・・

 しかし、だからこそあいキャンスタッフにしっかりとした食事作りをマスターしてもらい、その姿をみた子供たちからあんな人になりたいというメッセージがいただけるような「大人」になっていただきたいものです。

 竹下先生の講演は一度は生で聴くことをお勧めします。 

講演日程表     http://d.hatena.ne.jp/bentounohi/searchdiary?word=%2A%5B%C3%DD%B2%BC%CF%C2%C3%CB%A4%B5%A4%F3%B9%D6%B1%E9%CD%BD%C4%EA%5D        

 今回この講演をご紹介していただいた(社)大洲青年会議所の担当委員長である大洲・梶田商店(安心安全でうまい醤油・味噌づくり)13代目の梶田社長、ありがとうございました。

カテゴリ
月別アーカイブ
記事検索