10月20日 金曜日 3:10
そそくさと寝床を置きだし身支度を整える。
24年物の愛車に積み込んだ荷物とともに、4:00自宅発。
順調に走り11:00名古屋着。
名古屋駅そばの駐車場にプールし、荷物とともに地下街へ。
名物ひつまぶしの昼食を済ませ、しばし時間をつぶす。
ひつまぶしがどえりゃあ美味かった。
出発時間の1時間ほど前に、新幹線ホームに向かう。
ビデオとカメラをセッティングし、その時が来るまでひっきりなしに発着を繰り返す新幹線を激写する。
そして「やつ」がホームを歩いてやって来た。
名古屋駅総括助役というナンバー2と共に。
新幹線運転手専用のスーツに身を包み、専用かばんを持ち、あの帽子をかぶり「やつ」が来た。
いつもの顔だが笑っちまうほど緊張している。(笑)
それもそうだろうと思う。
久しぶりに見た新幹線は、やっぱりでかくて美しい。
そして一度に1500人の「人」を運ぶ。
そんな化け物電車をたった一人で運転するというのだから・・
おまけに独り立ちデビューは各駅停車の「こだま」号。
「こだま」と言ってもかつての「こだま」ではなく、700系の車両ゆえ最高速度も270キロ。
そんな車両でちゃんと各駅に止まれるのか?
停車駅が多くなる「こだま」の方がブレーキング技術も問われるという。
っていうか、本当に我が息子はそもそもこんな電車を動かせるのか?
そんなバカげた理由も正直あったが、しかし一生にたった一度のデビューは見届けたいと思ったのも事実。
軽い会話はしたものの、業務中の息子の邪魔はできぬ。
代わりに総括助役さんにご挨拶をし、息子の様子などを聞くことはできた。
人が見ていようが見ていまいが、変わらぬ姿勢で業務ができる運転手適任者であるとの評までいただいた。
ありがたいと思いつつ、頭を下げる。
さあ、いよいよ出発時間である。
大阪から滑り込んできた新幹線が名古屋駅に止まる。
速やかに運転手専用ドアがひらき、運転手が出てくる。
そして息子と業務引継ぎの挨拶と情報交換を行った後、息子はドアの内側へと消えた。
戦闘機のコックピットのような運転席の窓越しに「やつ」の姿が見える。
どうしても私が見ることができない世界に「やつ」がいる。
「すげえなぁ」と思ってしまう。
もはや完全なる別世界に「やつ」は生きているのだと悟る。
しかし見とれている時間はない。
そう、私たちもこの新幹線に乗るのだ。
危うく忘れるところであった・・
息子が予約してくれた席に着いた時を同じくして、その新幹線は滑るようにあっけなく発車した。
しばらく頭の中は混乱していた。
よくわからないが、
よくわからないまま時間が過ぎていった。
親とはこんなもんか?
あっという間に三河安城駅だった。
そしてかみさんの故郷の近くの安城を出てからは、豊橋、浜松、掛川・・
夕闇が訪れようとする頃に、
東京駅に到着する。
今まで何も考えずに乗っていた新幹線で、こんなに「覚醒」したまま3時間弱過ごしたことはない。(爆)
あっぱれなデビューであった。 と、 思いたい。
多少ブレーキのぎくしゃくはあったようだが・・
この車両のブレーキは効きすぎるとか後から言っていたが・・
おめでとう。
デビュー。
到着後運転席の車両に向かうと、奴が出てきた。
ご苦労さんと声をかけ、労をねぎらう。
いい顔だ。
続けていけば、頼りがいのある顔になっていくだろう。
明日の8:33発の折り返し新幹線にて名古屋に向かうが、その前に、やつはこの後の新幹線を三島駅の車庫に回送する業務が残っているという。
かなり変則的に業務内容は組まれているようだ。
間違わないように頑張れ。
少しほっとした気持ちでやつと別れ、かみさんと本日の宿へと向かう。
この宿もすごかった。
人気トップクラスのゲストハウス。
「nui」という。
ツインで一人4,000円。
世界中のゲストハウスを旅してきた代表が、3人の仲間とともに25歳で設立したのが始まり。
この店は2店舗めか?
シャワーで汗を流し、隣の店で夕食。
娘が予約してくれたこの店もまたすごかった。
参った。
もろ私好み。
美味い。
すばらしい。
としか言いようがない。
よくあるような自然派系を標榜する店とはレベルが違う。
感動した。
金額と内容のバランスにも舌を巻いた。
特にどぶろくにはしびれた。。
松山にも欲しい・・・
しこたま飲みながら、仕事で遅くなった娘ともかれこれ話し込んだ。
いい夜になった。
二人の子供たちの成長を感じながら丸一日過ごせるとは、何たる幸せ。
おバカな旅行のおかげですなぁ。
宿に帰ったとたん、感謝のうちに眠りに落ちていた・・・