会社を設立したとき、同時並行で行ったビル買収事業(現在のフレッシュリーブス)であるが、どこの馬の骨かも知れぬぺーぺーの私に大金を融資するなど無謀なバブル後の時代に、ともに奔走してくれ、力を貸してくれた「同志」と呼んでもおかしくない銀行員がいた。
その他にも多大な力を貸してくれた人はいるが、お金のことに関しては本当にお世話になった。
その後彼もスピード出世を果たし、若くして支店長を任されるほどに・・
後継者のいない取引先の社長から、雇われ社長として力を貸してくれないかということで悩んだ末に転職。
力のある彼は本気で事業を行い、見る間にその会社も成長させてしまった。
その変貌ぶりにはじめは喜んでいた創業社長は、そのうちに不安になる。
このまま乗っ取られてしまうのではないか・・
そしてその不安は彼を追い出してしまうエネルギーへと変貌する。
その会社を今まで成長させてきた彼は、いきなり失意のどん底へ落される。
これだけでも並の人間ではなかなか立ち直れないほどのことであるが、彼は自分で同業の会社を立ち上げ、それまで以上に取り組んだ。
ところが成長させた会社の社長は、彼の会社を敵視し、ことごとく妨害するように働いた。
身近に仕事ぶりを見ていただけに、自社の将来の不安が動機となったか・・
それでも彼は努力しまくった。
別事業による多角化も図り、安定化を目指していた。
そして、
先週久しぶりに彼からの電話が鳴る。
「死んでもいいですか」
もうどうにもやりくりがつかないこと、
もうどうにもつかれたこと、
そんなことを少しずつ話した。
そしていまから嫁と死にに行こうと思う、と言う。
「やめとけ」
後悔するから逃げるな。
すべてを捨ててまたやれ。
ほとんど意味のないであろう言葉を連ねる。
「いいんですか、 まだ生きてても・・」
「生きててくれ」
そして彼は生きている。
が、
日をおいてまた電話が鳴る。
「在庫商品を安くてもいいから買ってくれる人を探してほしい・・・」
少し前向きに動き始めた彼に協力しようと思う。
しばらく自分との戦いが続く彼を思いながら、
それでも生きようとする姿に感動する。
そんな彼を尊敬する。
事業の成功が人生の成功ではない。
のたうち回りながら生き抜くことができれば、
万々歳の人生だと思う。
人の足を引っ張らず、
嘘をつかず、
胸にしまう良心を裏切ることなく生き抜ければ。
いや、
たとえ裏切っても、
また思い直し、
こつこつと、
まじめに生き抜いていけば、
それはそれは、
天下の大成功の人生なのではあるまいか。
自分のこととして、身に染みる一週間であった。