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輝ける1000円
2012年3月1日 | フレッシュ・リーブス

本日の新聞記事の一つを見ていて思い出したことがある。

青葉土地の事務所があるフレッシュリーブスというビルは、私が12年前に中古でドラマの末に購入させていただいた物件であります。

その時に、とてつもないくらいに他者のお力を借り受けながら二年くらい駆けずり回って準備し、最後の最後は神がかり的なことまでありながら成就できたという経緯がある。

だからその時に私は誓った。

このビルは私のものではない。 多くの方々のおかげでたまたま所有させていただいているだけである。 だから、このビルはみんなの役に立つような、助けになるようなビルとして運営していこう。 直接その人にお返しが出来なくとも、困っている人などに還元していければ喜んでくれるのではないか?

そんな風に考えて事業をスタートしたものである。

 

そういう背景を持ちながら入居者募集を進めていたある日、 精神障害者の共同作業所を運営する友人から連絡があった。

今入居している作業所は老朽化と白アリ被害で今にも崩れそうであること、 危険を感じて松山市で移転先を探したのだが精神障害という偏見ですべて断られ続けていること、 もう猶予はないこと、   そんなことを聞かされた。

私は単純に 「ほしたら、うちのビルに来る?」 と返した。  友人はこんないい場所ではとても家賃が払えないといった。  「なら、いくらなら払えるの?」 と聞いた。

もちろんこちらが設定していた家賃よりかなり低い金額であったが、私の腹は決まっていた。 その時内定していたテナントさん、ごめんなさい。

 

大体においてこういう施設が移転してくるという場合、近隣からの反対運動がおこりあきらめざるを得ない状況が普通に起こりえる。

私は事前に町内会長に説明と説得をし、大体の準備は出来ていたので、反対運動も、その後の問題も起こらなかった。

それどころか、ビル全体を巻き込み、 近隣も巻き込んだ精神障害作業所主催のお祭りまで毎年開催し、 メンバーさんも住民もみんなで協働体験し、 理解を深めていった。

当時は全国でもこんな町中に精神障害者の作業所があることは珍しいらしく、 反対運動も起こらなかったことに不思議がる方々が県外からも視察に訪れていた。

 

作業所の仕事は額縁を作る仕事であったが、 精神障害の特徴でもある薬の副作用による長時間の仕事が難しいので、 1日2-3時間働くのがやっとの人もいた。

それでもここで社会人としてのスキルを身につけ、就職することを目標にたくさんの人がチャレンジされていた。

しかし、なかなか就職は決まらない。  今まで一度も就職することなく40歳、50歳、60歳を迎え、 人知れず亡くなってゆく。

私は考えた。

私が行っていたビルの清掃作業、 これを作業所に発注出来ないか?

 

やりたい人が現れた。  ビルの廊下と階段の掃き掃除、1回につき500円を月に2回であったと思います。

その就職したことがない50歳くらいの精神障害と軽度の知的障害のあるおいさんは、それはそれは嬉しそうに、楽しそうに清掃作業をやってくれた。

 

そして、  そのおいさんは突然逝ってしまった。

 

お葬式も終わり、 何日かのち、 そのおいさんの兄弟の方が事務所に訪ねてこられた。

そしてこう言った。

 

『彼はとても喜んでいました。 「わしは初めて就職できたでー、 生まれて初めてお給料ももろたでー」 とみんなに自慢していました。  本当にありがとうございました。 みんなに自慢し、見せびらかしていた1000円の初任給は一緒に棺桶に入れてやりました』 と。

 

なんとも言えない気持ちになったことを思い出す。

 

1000円で買えるものなど高々知れているかもしれないが、 たとえその1000円札が何万枚揃ったところで、 おいさんが心に仕舞った1000円の価値はなにものよりも遥かに大きくて、 なにものにも代えがたい輝きに満ち溢れていたんだろうなあ。

 

何気ない記事の一つに、 在りし日の思い出がよみがえる小春の日。

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